超短編小説「猫角家の人々」その34 だが、ヒポちゃんの方は用意周到だ。猫角蜜子から内緒で貰った「支度金」でさっさと要町のマンションを引き払い、錦糸町のキャバクラに転職した。錦糸町のキャバクラ、東京落胆地では、イエローキャブちゃんと名乗ることにした。ちょっと長い源氏名だが、気に入っている。アメリカの黄色いタクシーが何故かお気に入りなのだ。イエローキャブが「誰でも乗せる黄色人種、日本女」という意味を持っていることをヒポちゃんは勿論知らない。
池袋のキメセクの店に警察が捜査に入っても、なにも困らない。店もヒポちゃんの行方は把握していないと答えるだろう。錦糸町まで追いかけられる恐れはない。
留置場に入れられた太郎は、保釈を申請する。容疑を認めているので比較的スムースに保釈が認められる。保釈金の200万円は、老母の貯金から下ろした金を充当する。「痛いな。貴重な現金を使っちまった。」保釈された太郎は、真っ先に猫角姉妹のところに向かう。
「あんた、シャブで捕まったんだってぇ?なにやってんのよ!」
猫角蜜子に注射を打たれた記憶がかすかに残っている太郎は、怪訝な顔をする。だが、血の巡りが悪いので、自分がかどわかされていることに気が付かない。
「まあ、初犯だし、単純な事件だから懲役1年6か月に執行猶予3年ってところかな?」「静かにしていれば、3年で刑が失効して自由になるから。」
京都の当事者大学の法学部を出た蜜子は、すらすらと太郎の今後を解説する。
太郎は、一か月ほど後の地裁の公判で、執行猶予を言い渡され、即日、釈放される。そして、誰も迎えに来ない留置所を出て、とぼとぼと自室に戻る。仕事に出ることもなく、ひたすら謹慎して3年間を穏便に過ごすしかない。だが…..夕食を買いに外に出て帰って来た時、太郎は、さらなる試練に直面することになる。
両手にポリ袋に入ったスーパーの食材を下げた太郎は、自室の入り口で練馬署の刑事数名に取り囲まれる。「阿蘇太郎さんですね。お部屋の中を調べさせてもらいます。」刑事は、捜査令状を太郎の目線にかざして通告する。一体何がどうなっているやら。どかどかと太郎の部屋に入り込んだ刑事たちは、家探しを始める。10分ほどして、押し入れの奥から白い結晶の入った小袋数点を刑事が見つけ出してくる。太郎には身に覚えのない代物だ。「俺のじゃない!俺は知らない!」そう叫んでも、無駄である。太郎は、覚せい剤所持の現行犯で逮捕される。執行猶予中の犯行ということになる。前科の執行猶予が取り消される。新たな罪状が加えられる。合計で3年か、それ以上の実刑が課せられるか?誰かに嵌められた太郎。誰だろう?猫角蜜子に聞いてみたらわかるかもしれない。(続く)観音懺法
我昔所造諸悪業 皆由無始貪瞋痴 従身語意之所生 一切我今皆懺悔
無上甚深微妙法 百千万劫難遭遇我今見聞得受持 願解如来真実義
世尊妙相具 我今重問彼 仏子何因縁 名為観世音 具足妙相尊 偈答無尽意 汝聴観音行 善応諸方所 弘誓深如海 歴劫不思議 侍多千億仏 発大清浄願 我為汝略説 聞名及見身 心念不空過 能滅諸有苦 仮使興害意 推落大火坑 念彼観音力 火坑変成池 或漂流巨海 龍魚諸鬼難 念彼観音力 波浪不能没 或在須弥峯 為人所推堕 念彼観音力 如日虚空住 或被悪人逐 堕落金剛山 念彼観音力 不能損一毛 或値怨賊繞 各執刀加害 念彼観音力 咸即起慈心 或遭王難苦 臨刑欲寿終 念彼観音力 刀尋段段壊 或囚禁枷鎖 手足被杻械 念彼観音力 釈然得解脱 呪詛諸毒薬 所欲害身者 念彼観音力 還著於本人 或遇悪羅刹 毒龍諸鬼等 念彼観音力 時悉不敢害 若悪獣圍繞 利牙爪可怖 念彼観音力 疾走無辺方 玩蛇及蝮蠍 気毒煙火燃 念彼観音力 尋声自回去 雲雷鼓掣電 降雹澍大雨 念彼観音力 応時得消散 衆生被困厄 無量苦逼身 観音妙智力 能救世間苦 具足神通力 広修智方便 十方諸国土 無刹不現身 種種諸悪趣 地獄鬼畜生 生老病死苦 以漸悉令滅 真観清浄観 広大智慧観 悲観及慈観 浄願常譫仰 無垢清浄光 慧日破諸闇 能伏災風火 普明照世間 悲体戒雷震 慈意妙大雲 澍甘露法雨 滅除煩悩燄 諍訟経官処 怖畏軍陣中 念彼観音力 衆怨悉退散 妙音観世音 梵音海潮音 勝彼世間音 是故須常念 念念勿生疑 観世音浄聖 於苦悩死厄 能為作依怙 具一切功徳 慈眼視衆生 福聚海無量 是故応頂礼 爾時 持地菩薩 即従座起 前白仏言 世尊 若有衆生 聞是観世音菩薩品 自在之業 普門示現 神通力者 当知是人 功徳不少 仏説是普門品時 衆中八万四千衆生 皆発無等等 阿耨多羅三藐三菩提心 |
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